補助人工心臓

補助人工心臓(以下、VAS)には、ポンプの役割をする血液ポンプを体内に埋め込むタイプ(体内設置型)と、体外に出しているタイプ(体外設置型)があります。体内設置型は電力供給をバッテリーにかえることで数時間制御駆動装置から離れて活動することができ、状況によって外出・外泊ができ退院も可能です。体外設置型は血液ポンプを体内に入れないため、体の小さな人にも装着が可能です。

  • 現在、体外式は国循型(ニプロ)に一機種、体内式はDuraHeart(テルモ)、EVAHEART(サンメディカル)、Jarvik 2000、HeartMate II(ニプロ)の四機種が保険収載されています。
  • また、HeartWareが治験または臨床研究使用中です。
  • 2015年8月に小児用補助人工心臓EXCOR(Berlin Heart)が承認され、体格の小さな子供さんも重症心不全になっても救命されるようになりました

 

国立循環器病センター補助人工心臓(ニプロ)

  • ポンプの役割をする血液ポンプを体外に出しているタイプ(体外設置型)です。
  • 体外設置型は血液ポンプを体内に入れないため、体の小さな人にも装着が可能です。
  • しかし、長期の使用に問題があり、装着中は現時点では退院できません。
  • 体外設置型VASは空気により駆動され、ポンプの役割をする「血液ポンプ」と、その機能を適切に調節するための「制御駆動装置」から成ります。
ポンプ部分
ポンプ部分
駆動装置部分
駆動装置部分

デュラハート

  • 遠心ポンプの内部で回転して血液を押し出す羽根車を、磁気で浮かせて回す独自の「磁気浮上方式」※1を採用しています。
  • 1995年より12年の開発期間を経て、2007年8月欧州で販売を開始されました。これにより、世界初の磁気浮上型遠心ポンプ方式を採用した左心補助人工心臓の実用化に成功しました。
  • 心筋症や心筋梗塞などにより、心臓のポンプ機能が著しく弱くなった重症心不全の患者さんにとっては、心臓移植が有効な治療法です。現在は、心臓移植を待つ患者さんの移植までの”つなぎ”を主な目的として使われていますが、将来的には、より長期的な使用にも対応できるよう開発を継続しています。
  • 磁気浮上方式は、元京都大学工学部 赤松映明教授とNTN株式会社が共同で考案した磁気浮上型遠心ポンプの技術を導入し、共同開発されました
ポンプ
ポンプ
装着した時の模型
装着した時の模型

エヴァハート(EVAHEART)

  • 遠心ポンプを採用し、小型のポンプ(ポンプ容積132mL、重量420g)です。
  • コンパクトサイズでありながら、血液ポンプとして高い流量性能(最大20L/min)を有しています。
  • 特に、H-Q曲線がフラットになっているため、揚程(ポンプ吸入口と吐出口の圧較差)の低い領域においても高い流量性能を発揮します。
  • ポンプ回転軸シール部分の血液凝固を抑えるため、クールシール液をポンプ内部に循環させるシステムを採用しているため、血液ポンプを長期にわたって安定して駆動させることができます。(18台の耐久性試験を実施し、2年間全てのポンプの停止事故なく稼働したことを確認しています。)
  • 持ち運び可能な小型コントローラに加え、バッテリやAC電源など多重な電源へのアクセスが可能、非常用バッテリも搭載し、在宅療養も可能な設計となっているため、患者QOLの向上が期待できます。

 (サンメディカル技術研究所のHPから引用:一部改変)

Jarvik 2000

  • まだ保険収載されていませんが、すでに日本人で使用されており、装着後6名が心臓移植にまで至っています。
  • ポンプは小さく、心尖に挿入します。ポンプの中の羽根が回転して、血液を送るシステムで、小さな体のヒトにも使用可能です。
  • 右心室用のタイプもあり、左心室にDuraHeartを、右心室にJarvik 2000(RV型)を使用することで、両心室を補助でき、しかも在宅管理できるようになりました。大阪大学では、このような補助を行って待機していた患者さんの心臓移植を行いました。
  • 循環血液量に応じて血流量を増やすことができないので、運動する前には送血量を増やすようにダイヤルをアップしなければなりません。
  • 近い将来保険収載されることが期待されています。
ポンプ
ポンプ
装着時の状態
装着時の状態
両VAS症例の胸部Xp
両VAS症例の胸部Xp

ハートメイト2(HeartMate II)

HeartMate II は米国ソラテック社が開発した補助人工心臓であり、その使用により多くの心不全患者が、健康時に近い生活を取り戻しています。重度の心不全患者に対して長期にわたり心臓の補助を行うことができる HeartMate II は「心臓移植への橋渡し」として製造販売承認された補助人工心臓です。将来は心臓移植の適応とならない患者様への永久使用の人工心臓(Destination Therapy)として期待されています

  • HeartMate II は21,000人(2015年4月現在)を超える重症心不全の患者に埋め込まれました。
  • HeartMate II は41カ国の350を超える病院で使用されています。
  • HeartMate II は米国にて、心臓移植への橋渡し(Bridge to Transplant)と永久治療(Destination Therapy)の両方に対して承認されたLVADです。

ハートウェア(HeartWare)

  • 非常に小型の遠心ポンプでありながら、10 l/分の血液を送ることができます。
  • 体格の小さな日本人に有効なポンプで、小児や、先天性心疾患(右心室型単心室など)にも使用可能を報告されています。
  • 早期の保険収載が期待されています。
ポンプ
ポンプ
装着時の状態
装着時の状態

EXCOR® Pediatric(カルディオ)

概要

EXCOR® Pediatricは、小児用の体外設置式の空気圧駆動型補助人工心臓システムです。
EXCOR® Ikus 補助人工心臓駆動装置(以下、「Ikus 駆動装置」)、血液ポンプと、脱血用及び送血用カニューレ(以下、「カニューレ」)、ドライビングチューブ等で構成されています。
血液ポンプは6種類のサイズがあり、体躯に応じて使用します。
Ikus 駆動装置がドライビングチューブを介して血液ポンプに空気圧を供給し、血液ポンプのメンブレンを拍動させ血液を駆出することで心機能を補助します。

特徴

  • 世界で唯一の小児用体外設置式補助人工心臓システムです。
  • 1つの駆動装置で左心補助(LVAD)、右心補助(RVAD)、両心補助(BVAD)が可能です。
  • 10mL, 15mL, 25mL, 30mL, 50mL, 60mLの6種類の血液ポンプを準備していますので、小児の体重に適したサポートが可能です。
  • 血液の乱流を極力抑えるポンプ設計、抗血栓性と耐久性の高い小さなポリウレタン製3葉弁の開発、Carmeda® バイオアクティブ ヘパリンコーティングにより、抗血栓性の高い世界最小の血液ポンプ(10mL)の実用化に成功しました。
  • Ikus 駆動装置は、駆動部、コントロール部ともに複数の冗長設計を施すことで、システムの安全性を高めています。

 

■Ikus 駆動装置

 

血液ポンプを動かす空気圧を作り出す駆動装置です。

空気圧や拍動数等のパラメーター設定はコンソールとなるラップトップPCから行います。

院内での移動を可能とするため、バッテリーを装備しています(バッテリーによる駆動保証時間は30分)。

■血液ポンプ

体躯に合わせて選択できる、ポンプバリエーション。

ポンプ内部の独自な構造が血液の乱流を抑え、スムーズな血液の流れを作ります。

ハウジングは透明なポリウレタン製ですので、内部の観察が容易です。

血液を拍出するメンブレンは3層構造となっており、安全性を高めています。